本書は明治三十一年から昭和二十一年の分村に至る、旧中城村関係の新聞記事を集成したものである。 この本の最大の特徴は、旧中城村関係のみならず、中頭や県レベルの記事を実に幅広い目線で採用している点にあろう。しかもそのやり方が半端ではない。中城関係の有無に関わらず、前後する、あるいは関係する記事はストーリー性を重視して殆ど片っ端から網羅しており、そのために、記事の一つびとつの意味が極めてクローズアップされているのである。加えて、移民村、教育村、政争地等と形容された旧中城村の歴史個性を踏まえ、移民、教育、政治(争)関係の記事が丹念に拾われている。また徴兵(忌避)関係の記事にも視野が及んでおり、その結果、従来の地域史にありがちだったステレオタイプの新聞集成ではなく、いわば近代沖縄史とでも称すべき内容に仕上がっている。確認できる最新の新聞情報を駆使するなど、後発の利とはいえ、新たな地域史編集の到達点がここにある。先に「移民編」で沖縄タイムス出版文化賞(特別賞)を受賞したパワーは健在である。事務局をはじめ関係者の労を多としたい。 ところで、新聞集成の難しさであるが、中頭や県レベルの記事を採用することは、収録件数の制約から、同時に村関係の記事を割愛することを意味する。本書を一読すれば、数千件に及ぶ膨大な記事の取捨選択に苦闘した事務局や関係者の姿が垣間見れるが、巻末の不採用記事一覧は、その懸念を払拭するものである。 その他、洗骨をやめ火葬を奨励する記事や沖縄独特の雪隠(つまり豚小屋)の話、男産婆の暗躍、そして海軍第一艦隊の中城湾来航等々、興味深い記事も本書には頻出する。 欲をいえば巻末の索引において、例えば中頭街道と中頭郡道など、同一あるいは関連する用語を捜す際に「を見よ」や「をも見よ」の参照記号を付してくれたら今少し索引が充実したのではないか。いずれにせよ、合併を目指す両村民だけでなく、多くの県民にとっても、また新たな知的財産が加わったことを喜びたい。 |